
夜の川で漁をする許は、酒をひと口、地面に注いでから飲む。 ここで溺れた人にも飲ませてやるためだった。 ある晩、その隣に一人の青年が現れる。 蒲松齢『聊斎志異』の「王六郎」を、読みやすい日本語で語り直した短編。

終電を逃した夜にだけ現れる「ねむりの駅」。 改札を抜けた者は、いちばん帰りたい夜へ一度だけ戻れるという。 駅員のカナタと、眠れない乗客たちの三夜の物語。

引っ越しまであと七日。 段ボールだらけの部屋に、灰色の猫が入ってくるようになった。 名前はつけない。つけたら、置いていけなくなるから。

夜明け前の浜には、ときどき光が落ちている。 それを拾って回収するだけの、時給のいいアルバイト。 ただし「重い光は拾うな」という決まりがある。
傘の修理屋に、黄色い傘を半分にしてほしいという女の子がやってきた。 雨が入るようにしたいと言う彼女には、ある理由があった。 二百七十円の注文から始まる、雨の日の小さな物語。