舞台と職場
二〇二二年四月、東京・神田秋葉原。オフィス街と電気街のちょうど境目にあるビルの一角に、この物語の舞台となる「テックスター株式会社」があります。従業員は約三十名。受託開発を中心に、自社サービスの小さな運用も抱える、成長中のIT企業です。大企業ほど制度は整っていませんが、その分、若手にもすぐに実務が回ってくる現場です。
朝、透明なパーテーションの向こうで、もう誰かがキーボードを叩いている。日中は、コードレビューやCI/CDといった現代的な開発文化が、朝会や振り返りの短い集まりと一緒に、日常の中に混ざり合う——そんなオフィスです。桜モチーフの小物や、近くの川沿いに残る桜並木が、季節のかたわらに寄り添っています。
主人公は、宮城県仙台市から出てきたばかりの望月桜子、二十二歳。大学の情報系学部でPythonとWeb開発の楽しさを知り、この会社に新卒として入社したところです。「授業でやってきたこと」と「仕事で求められること」の差に、期待と不安をないまぜにしながら、桜子は初日の坂道を上っていきます。
物語の第1クールが描くのは、二〇二二年四月から翌年三月までの一年間。新卒一年目のエンジニアが、コードと、人と、失敗と、少しずつ手を動かしながら出会っていく、東京の一年です。