第1話夜光の浜

文字サイズ17px

求人票には「夜間軽作業・海岸清掃」とだけ書いてあった。

集合は午前2時。指定された浜に行くと、白髪の男がひとり、金属のバケツを持って立っていた。作業着の胸に「回収」と刺繍がある。

「ひろうだけだ」と男は言った。「難しいことはない」

何を、と訊く前に、波打ち際が光った。

夜明け前の浜に散らばる光の粒
夜明け前の浜に散らばる光の粒

砂の上に、光の粒が散らばっている。蛍にしては動かない。ガラス片にしては、内側から光っている。

「星だ」

「……星、ですか」

「そう呼んでる。誰も本当のところは知らん」

拾ってみると、体温くらいの温度があった。手のひらの上で、ゆっくり明滅している。心臓みたいだと思った。

バケツに入れると、こつん、と乾いた音がした。

「決まりがひとつある」男が言った。「重い光は拾うな」

「重いって、どのくらい」

「持てばわかる。持てないくらいだ」

その夜、柊ひいらぎは37個の光を拾った。どれも軽かった。バケツを抱えて帰る道で、中の光はもう消えていた。

時給は、募集要項に書いてあった額の倍だった。

次の話へ第2話 願いの重さ