ダークランドの住人たち
主要人物のほかに、本編に登場する人物と、その語り口。
栗売りの老婆(第6章から)
ハリネズミ。札にされずに生き残った、数少ない住人のひとり。一人称は「あたし」、二人称は「あんた」。下町の江戸っ子風の歯切れのよい口調で、「〜のさ」「〜おくれ」「〜かい」。湿っぽく身の上を語らない。
人を語るときには必ず名前を添える。「ロディはね」「あの子は」。名前を言うとき、少しだけ間が入る。それは毎朝の暗唱の癖。名前が輪郭であるこの国で、彼女は名前を唱えることで形を保ってきた。ただし、自分の名前だけは失っている。聞かれると「さあね」とはぐらかす。
七輪の縁に彫られたハートで熾火を灯す。住人にも残響を使う生活の技術がある。
ロディ(第6章)
クラブの10。衛兵見習いで、祭りの迷子係だった。
絵の具屋の見習い(第14章)
ダイヤの3。下町の見習い口調で、人懐こく、のんびり。色を失っていく国の薔薇を、「最初から白かったこと」にして塗り続けた庭師見習い。色の名前を一語も言えず、「あの色」「それの色」と指差しで言う。「白」だけは言える。嘘の色だから。
門番(第16章)
クラブのJ。老兵。一人称は「わし」。地鳴りのような低い声で、声を立てて笑う。城門の内側で、女王がまだ優しかった頃の記憶を守った。女王の昔の呼び名を知っているが、決して言わない。「拾っていいのは、陛下だけさ」。白ウサギを「時計屋」と呼ぶ。
侍女(第19章)
ハートの5。「〜でございます」と折り目正しい女中言葉。感情は目の伏せ方に出る。
三月ウサギと眠りネズミ
お茶会の住人。三月ウサギは短い叫びと命令だけで、会話が成立しない。「ミルク取って!」「駄目! その席は駄目!」。眠りネズミには台詞がない。寝ている。
ひなた(第13章から)
現実世界、未知留の隣の席の子。明るく弾む口調で「〜じゃん」「〜っしょ」、質問が多く、未知留の三倍喋る。未知留の呼び方は「七瀬さん」で固定。気づいても詮索せず、「ふーん?」で流す度量がある。